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2011年3月21日月曜日

[呼吸器話] ストローと風船のお話

前回は人間の呼吸器をストローに風船がついたものと考えるという話をしました。これが人工呼吸を考えるときにどのように役に立つのでしょうか?
第1回ワークショップ講義資料より


気管挿管された患者さんをバッグ換気したときに、バッグを押すのが固かったり、柔らかかったりするのを経験したことがあるかと思います。この「固い」「柔らかい」も「ストロー + 風船」のモデルで考えるとわかりやすくなります。
まずストローについて考えます。ストローは上気道、気管、気管支、細気管支を含んだ空気の通り道を指すのでしたね。気管挿管されている場合ではこれに挿管チューブも合わせて考えます。ストローのような細い管とトイレットペーパーの芯のような太い管がある場合、どちらの方が空気を通しやすいでしょうか?もちろん太い管の方ですね。したがって、管が細くなっている場合にはより強くバッグを押さなければ空気が入っていかないのに対して、管が太い場合にはそんなに強く押さなくても空気が入っていくことになります。前回に例として挙げた細い挿管チューブを使った場合、喘息発作がある場合、患者が挿管チューブを咬んでいる場合には、管が細くて空気が通りにくくなるので、バッグをより強く押さなければならないことがわかりますね。この空気の通りにくさのことを業界用語では気道抵抗と呼びます。
さて風船の部分はどうでしょうか?ここではゴムがぶ厚い風船と、ゆるゆるで薄いゴムの風船を思い浮かべて下さい。どちらをふくらませるのにより強くバッグを押さなければならないでしょうか?ぶ厚いゴムの方ですね。肺疾患により肺胞がふくらみにくくなっているのは、風船のゴムがぶ厚くなっている状態とたとえることができます。したがって肺水腫やARDSなどで肺胞がふくらみにくくなっている場合には、風船をふくらませるためにより強くバッグを押さなければならなくなります。風船のふくらみやすさのことをコンプライアンスと呼びます。エラスタンスという用語を聞いたことがあるかも知れませんが、こちらは風船の縮みやすさを示し、コンプライアンスの逆になります。実際には胸膜、胸郭といった肺を包む構造もコンプライアンスに影響するのですが、まずは単純に「肺胞のふくらみやすさ=コンプライアンス」と覚えて下さい。
次回はバッグ換気からいよいよ人工呼吸器につなぎ替えてみます。

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