Iron lungのような陰圧呼吸器は気管チューブを必要としないため人工呼吸関連肺炎(VAP)を起こさないというメリットがあります。しかし、清拭や体位交換といった看護や、ラインを取ったりと行った処置をしにくい(できない)というデメリットがあります。前回の写真にあったように装置が大きいため、検査や手術のために移動させることも困難です(そもそも陰圧呼吸器をつけたままCTを撮ったり、手術することもできません)。
そのため今日使われるのは気管挿管または気管切開を用いた陽圧呼吸です。自発呼吸を含めた陰圧呼吸では、胸腔内圧を下げることによって圧較差を作って肺内に空気を流入させるのに対して、陽圧呼吸では外気圧を肺内よりも高くすることで圧較差を作って吸気を起こさせます。Iron Lungと比べるとはるかに小さく、移動も容易です。
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陰圧呼吸と陽圧呼吸を比べたのが下の図です。いずれの型の人工呼吸でも助けるのは吸気だけで、呼気は伸展した肺・胸郭が縮むことで受動的に行われます。人工呼吸器が空気を吸い取ってくれるわけではありません。
まとめ
- 人工呼吸器は肺と外気の間に圧較差を作ることで吸気を助ける。
- 陽圧呼吸(現在使用している人工呼吸)では、外気を陽圧にすることで圧較差を作る。
- 陽圧呼吸のモード・設定は、どのタイミングで陽圧をかけるのか、どれだけ陽圧をかけるのか、どのようなパターンで陽圧をかけるのかを決める(詳しくはまた後ほど)。
- 呼気は受動的に行われ、人工呼吸器が助けるわけではない。
次回以降はさらに陽圧呼吸について述べますが、まずは人工呼吸を考える上で有用な肺モデルについて説明します。