人工呼吸と聞くとまず気管挿管を思い浮かべる方がいるのではないでしょうか?挿管は身につけるべき重要な手技であり、若手医師の皆さんの中には「おれっち、かなり挿管上手になってきたよな」とにんまりしている方もいるかもしれません(どんなに上手になってもDifficult airwayには必ず遭遇します。気道管理では常に第2,第3の方法を考えておかなければならないのですが、この話はまた別の機会に)。
では「人工呼吸=気管挿管」なのでしょうか?重症肺炎や心不全、ARDS(急性呼吸促迫症候群)の患者さんには呼吸を助けるために人工呼吸器を装着して陽圧呼吸を行う必要があるかも知れません。一方で、薬物中毒や頭部外傷による意識障害、急性喉頭蓋炎やアナフィラキシーによる上気道閉塞などの病態では、気道を確保するための気管チューブが重要であって、必ずしも人工呼吸器による呼吸補助を目的としているわけではありません。高齢者の重症肺炎で見るように、意識障害があって、喀痰を自分で排泄できず、かつ陽圧呼吸も必要といったような気管チューブも人工呼吸器も両方必要な場合も当然あります。
一口に挿管・人工呼吸と言っても、気管挿管が必要な場合と、人工呼吸器が必要な場合(またはその両方)を区別して考える必要があります。このことは呼吸器離脱・抜管の時にも当てはまり、人工呼吸が必要でなくなっても気管チューブが必要かどうか(抜管できるかどうか)は別に判断します。気管挿管の適応は以下の3点です。抜管できるかどうかの基準はその逆と考えます。
気管挿管の適応
- 気道保護
- 上気道閉塞の解除
- 分泌物の除去
人工呼吸が必要であっても、気管挿管が必要ない場合(気道を保護でき、上気道閉塞がなく、分泌物を除去できる)、気管挿管せずに行う非侵襲的陽圧換気(NPPV)を使うこともできます。
今回のまとめとしては、
気管チューブと人工呼吸器を分けて考える
ようにして下さい。そうすれば挿管するかどうかが血液ガスの値で決まらないことも自ずと分かるでしょう。
「人工呼吸器は何をしてくれるのか?」について次回は話したいと思います。
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