参加された方からの質問と、Habashi先生とAndrewsさんの回答を以下にまとめました。
APRVセミナーでの質疑応答の様子 |
Q. P highはどのように設定するのか?
A. VCVからAPRVに変更する場合にはプラトー圧、PCVまたはPRVCから変更する場合にはピーク圧を用いる。HFOVの場合には平均気道内圧より2〜4cmH2O高く設定する。
始めからAPRVにする場合には、呼吸パターン、胸部X線、血液ガスを見ながら調節する。ほとんどの場合、20〜30cmH2Oになるが、重度の肥満がある場合や腹腔内圧上昇がある場合にはそれより高くなることもある。流量波形が尖った三角形ではなく、なめらかな正弦波様になることも指標になる。
Q. PaCO2が上昇したときの設定変更は?
A. 肺リクルートの余地があるのなら、P highまたはT highを上げる。代謝需要(CO2産生)が増大していて、すでにT high設定が高い(≧8秒)なら、T highを下げる。T low設定が不適切に短く、Release終末での流量が最大呼気流量の75%よりも高くなっている場合には、T lowを伸ばす。
Q. 片側性病変にもAPRVを使えるのか?
A. 片側性病変に対しても安全に使える。両側の肺に圧がかかるのはどのモードにも共通しており、APRVだけ特に肺傷害のリスクが高くなるわけではない。一側だけの重度の肺疾患では分離肺換気を行うこともあるが、その場合、左右で設定時間(T highとT low)を揃える必要はない。
Q. APRVで人工呼吸管理中にもリハを行えるか?
A. APRVを使っていても安全にリハを行うことができる。(セミナーではP high 35cmH2Oの設定で歩行している患者さんのビデオが紹介されました)
Q. NPPVでもAPRVを用いることができるか?
A. NPPVでもAPRVを使うことは可能。設定は同様に行う。
Q. APRVで人工呼吸管理中に、気道分泌物について特に注意するべき点は?
A. APRVで肺リクルートが行われると分泌物が中枢気道に上がってくるようになる。APRV開始1〜2時間後にPaCO2が上昇する場合には、分泌物による気道閉塞の可能性も考慮する。
Q. 気胸のような圧傷害のリスクは?
A. 他のモードと比較してAPRVで圧傷害のリスクが高くなるということはなく、むしろ低いと考えている。
Q. APRVでのウィーニングは?
A. P highを下げてT highを伸ばす(Drop & Stretch)と最終的にCPAPに近くなる。CPAP 15cmH2Oで呼吸状態が安定していればSBTを行い、成功すれば人工呼吸器から離脱出来る。SBTがうまくいかなければ再度CPAP 15cmH2Oに戻す。
Q. APRV使用中の鎮静薬の選択は?
A. 必ずしも鎮静をする必要はないが、使うのであれば呼吸抑制作用のないデクスメデトミジンかケタミンを用いる。鎮静を開始する前に、そもそも設定が不適切なために不穏になっていないか確認する。
Q. ECMO使用中のAPRVの設定は?
A. P high 30cmH2O程度に保つ。換気はあまり必要ないので、T highを長めにする。
Q. 特発性肺線維症(IPF)でのAPRV設定は?
A. 肺リクルートが期待できないので、T highは短めに設定する。
Q. APRVでは静脈うっ血が起こるか?
A. 胸腔内に陽圧をかけるからといって、必ずしも静脈うっ血が起こるわけではない。肺血管抵抗は肺が過膨張すると上昇するが、肺が虚脱しても上昇し、機能的残気量(FRC)で最も低くなる。APRVで虚脱した肺が広がれば、肺血管抵抗は低下して静脈血の還流が良くなるのでうっ血は軽減する。
熱心に質問して下さったみなさま、ひとつひとつ丁寧にお答え下さいましたHabashi先生とAndrewsさん、ありがとうございました。
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